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大学時代編⑬ 卒業~フリーター~八百屋への想い

2022.03.26

大学時代編

タイ・ラオスの旅から帰ってきて、僕は4回生になった。多くの学生は就職活動に忙しくなる頃なのだが、僕は全く就職する気はなかった。もともと人と違ったことをしたいという性格であったことと、オーガニックや環境問題に目覚めたことで一般企業に就職したくないという気持ちが強かった。親は何とかして就職させようと思っていたが、自分の道を生きたいと頑なに就職は拒んだ。とはいえ明確にやりたいことがあったわけではない。「将来は農業か、八百屋か、ゲストハウスか、オーガニックカフェか、そんなのができたらいいな~、でもとりあえずはまだまだ旅にたくさんいきたいし、30歳くらいまでに決めたらいいかな」とゆるーく考えていた。そんなわけで卒業後は、そのまま八百屋でのアルバイトを続けた。シフトを増やしてもらい毎日朝からラストまで働くようになった。

そんなお気楽者だったものの、いつまでもバイト生活というわけにはいかないよなと考えてはいた。そんな時「野菜ソムリエの美味しい経営学」という本に出会った。「野菜ソムリエ」を考案し日本で広め、当時東京で「EF(エフ)」という八百屋を多店舗展開されている方が書いた本だった。その本には日本の農業や野菜流通の様々な問題点が書かれていた。そしてその解決策の一つとして「従来型の対面販売の土臭い八百屋は若い世代には入りにくく衰退している。しかしセルフスタイルのスーパーは専門家がおらず、野菜の旬やこだわりの栽培方法などの価値を消費者に伝えられていない。これからの日本には、おしゃれで入りやすく、また食べ方や旬、産地や生産者の情報をきちんと伝えながら売る新しい八百屋が必要だ。それが日本の農業の質を高め発展させることにつながる」といったことが書かれていた。しかも実際に東京で八百屋を多店舗展開されていて、売上も順調だとある。そして本の最後には「従来の殻を破る農業者や流通業者の方々が、今後さらに増えていくのを心から期待しています。その意識の変化こそが、これからの農業イノベーションのエネルギーになるはずです。」とあった。

八百屋がちゃんとビジネスとして成立しうるということがまず目からウロコだった。というのも僕が働いていた八百屋はビジネスとしてはかなりひどい状況だった。それを見ていたので将来自分で八百屋をやるのもいいけど、ちゃんと生計立てれるのかな、無理そうだなという気持ちがあった。八百屋でやれる、と書かれていることに凄く励まされた気分だった。「八百屋は農家さんに貢献できて、お客さん喜ばれて、とてもやりがいのある仕事だ。アルバイト経験も活かせるし、若い世代に受け入れられる新しいスタイルのおしゃれな八百屋をやってみたい!農業やカフェをやるより、そっちの方が自分には向いている気がする!よし、将来はやっぱり八百屋を目指そう!」とこの本を読んで思った。

とはいえこの時はまだ、まあ5年後くらいかなとやはり呑気に考えていた(笑)。そんな僕が急遽八百屋をやることになったのはこの本を読んだ約2カ月後だった(なぜ八百屋をやることになったのかは「開業準備編 奇跡のひとしずく」をお読みください)。この本の出版日を改めて確認してみたら2006年1月とあった。僕が開業したのが2006年の5月なので、今思えば絶妙なタイミングでいい本に出会ったなと思う。読んでいなかったら、八百屋で本当にやれるのかと迷ったかもしれない。10年振りくらいに久しぶりに改めて読み返してみたら、線がいっぱい引いてあった。そしてこの本に書かれている八百屋のやり方を、かなり忠実に実現しようとしてきたんだなと思うところがいっぱいあった。

長々と「大学時代編」を書いてきたが、ようやく「開業準備編」の時代と繋げられた。学生時代とその後の1年間の八百屋バイト生活の間に受けた様々な影響で、徐々に自分の方向性を見出していった。とはいえ八百屋開業後は、それまでとは比べ物にならないくらい様々な悩みや葛藤を抱え、考え方も様々に変化しブレにブレまくってここまでやってきた。次回からはそんな開業後の様々な思考変遷やエピソードを書いていきたいと思う。

大学時代編はこれにて終了します。お読みいただきありがとうございました。

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