八百屋を悩ます野菜〜かぼちゃ編〜
2018.08.22
こんなかぼちゃがいい!
果肉の色が濃いオレンジ色。
種がみっしりと詰まっている。「わた」がスカスカしていない。
果肉部分と種の部分の「バランス」がいい。種の部分が大きすぎないこと
皮の色はマットな質感、乾いた感じになっている。ヘタの部分がよく乾燥している。
1個1.5k~2kくらいのものの方が比較的良質。
ヘタの周りがググッと盛り上がって、「いかり肩」なっているもの。
ベチャかぼちゃの苦い思い出
八百屋をはじめたころ、正直言って店で売っているかぼちゃに自信がなかった。お客さんに「このかぼちゃ・・美味しい?」と聞かれて「はぁ・・まあまあです・・」みたいな(笑)。
当時仕入れていた農家さんのかぼちゃは、正直言って水っぽかった。甘味も薄くていわゆる「ベチャかぼちゃ」だった。でも当時は仕入先が少なく、かぼちゃの美味しさを追求するすべがなかった。イマイチやなぁ・・と思いながらも、京都産やし・・無農薬やし・・お世話になってるし、お付き合いもあるし・・ということで仕入れていた。でもある時お客さんに、「このかぼちゃ、全然美味しくなかったで。なんで北海道のかぼちゃ仕入へんの?」とはっきり言われてしまった(笑)。いや、だって無農薬とか地産地消を大事にしている店やもん。(だから味は二の次やもん!笑)。と心の中では思ったものの、とても情けなく悔しかった。
きゅうりやなすにも味の違いはもちろんあるが、かぼちゃのそれはちょっと次元が違う。かぼちゃだけはもっと慎重に仕入なくてはいけない・・と思い知らされた。
失敗から学んだこと・・完熟収穫と栽培方法が大事
その後もいろいろなかぼちゃを仕入れたが、切ってみたら色が薄くて熟していない、水っぽくて甘くない、というかぼちゃにたくさん出会ってきた。どうやら収穫したときに未熟なかぼちゃは、追熟させてもあまり美味しくならないらしい、ということを知った。収穫時にしっかり熟したものは収穫後しばらく寝かせるとさらに甘みが熟成して美味しくなるが、未熟なものは寝かせても甘くならない。調べると、かぼちゃは受粉してからの「積算温度」によって熟度がきまることがわかった。だから採り時をちゃんと計算している農家さんから仕入れないといけない。またかぼちゃはほうっておくとたくさん実をつける。しかし実をたくさんつけると1個あたりにいく養分は薄くなって味も薄くなる。だから味のためには、収穫量を犠牲にする必要がある。またさらに、水はけのいい環境を作ることもとても大事・・。などなど、そういうこだわりを持って栽培されているかどうかが大事だとわかった。
ワンドロップのかぼちゃ
そんな様々な苦い経験を経て、最近ではそこまで失敗することはなくなった。かぼちゃは本来夏の野菜だが、産地リレーをすることで一年中出回っていて、ワンドロップでも一年中取り扱っている。
1月~4月は、ニュージーランド産の無農薬のかぼちゃ。輸入カボチャは安全性が心配だが、日本の会社が日本の品種を持ち込んで、現地の農家さんと協力して栽培しているこだわりのものを仕入れている。
5月~6月は、国産のかぼちゃが九州から出始める。この時期は市場からも仕入れる。鹿児島、長崎、熊本、宮崎などいろいろあるが、お気に入りは鹿児島の「加世田かぼちゃ」。ここのかぼちゃは産地を上げて完熟出荷にこだわっており、とても品質がいい。また5月末からは宮崎県産「栗マロンかぼちゃ」を仕入れている。この栗マロンかぼちゃは、通常の南瓜の半分しか収穫できず、手間がかかる上にあまりの収量の悪さ、栽培の難しさに「農家泣かせの種」と言われているそうだ。しかし品質と味は抜群にいい。ちょっと価格は高いけど、ワンランク上の美味しいかぼちゃとして仕入れている。
7月~8月上旬にかけては京都や滋賀の近郊農家さんのかぼちゃ。上手に栽培管理をして完熟出荷をしてくれる農家さんから仕入れる。京都や滋賀のかぼちゃは気候風土的に「ホクホク」にはあまりならず、ねっとりとした食感のものが多い。完熟していないと甘くなく、水っぽい「ベチャかぼちゃ」になってしまうので販売の際には注意を払っている。
8月~12月までは北海道のかぼちゃ。「栗マロンかぼちゃ」も宮崎県産から北海道産へと切り替わる。北海道は冷涼で乾燥した気候風土なので、水分が少なく「ホクホク」の食感になる。気候的に合うのか北海道のかぼちゃはあまりハズレはないが、ワンドロップではより味と安全性にこだわって栽培している農家さんから仕入れている。またこの時期になると寒くなるにつれてかぼちゃの傷みが増え始める。収穫後の保存状態がいい農家さんから仕入れることが重要。
八百屋にとってかぼちゃは重要!!
このようにかぼちゃは、特に味の違いがわかりやすい野菜。そのうえ、お弁当に入れやすい、調理しやすい、比較的安い、栄養豊富、彩りがいい、などの理由で一年中需要がある。冬は輸入してまで日本人はかぼちゃを食べる。美味しいかぼちゃ、少なくとも「ハズレ」ではないかぼちゃを安定供給することが、八百屋には求められる。かぼちゃは八百屋にとって相当に重要な品目の一つだ!