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なぜ無農薬を選びたいのか

2019.06.05

考え方

うちの店は無農薬だけを売っているわけではない。品揃えを維持するためには、中央市場からも普通栽培のものを仕入れている。また栽培方法にかかわらず、生産者の魂のこもった野菜だと感じれば積極的に仕入れている。

野菜のポップには「農薬不使用」「特別栽培」「普通栽培」など、最低限の栽培方法の情報は書いている。旬のもの、例えばいまならそら豆、エンドウ豆、モロッコ豆、スナップエンドウ、ズッキーニ、フリルレタスや葉物類、玉ねぎ、などは農薬不使用や有機JASのもので取り揃えている。しかもできる限り近場のもので。

無農薬野菜が欲しいのなら、できれば季節のものを選んでいただきたい。この蒸し暑い季節に、キャベツやら大根やらレタスやらが無農薬で簡単にはできない。日本は高温多湿でヨーロッパのような冷涼な気候ではない。北海道や長野から1箱2000円の送料で仕入れて、1個600円でキャベツを売って、お客さんが買ってくれるなら売るが。そんなことまでして年中無農薬のキャベツを売ることに、あまり意味を感じない。

そもそも、なぜ「無農薬」を選びたいのか?
農薬が体に悪いから。
ガンになるのが怖いから。
子供に安心して食べさせたいから。

それらが決して悪いとは言わないけど、日本人の多くは、「無農薬=高付加価値野菜」だと勘違いしている気がする。「無農薬」というだけで、美味しいわけでも栄養価が高いわけでも、安全性が高いわけでもない。むしろ農薬を適正に使用した方が、美味しく安全なものができる場合もある。

有機野菜の本当の価値とは、農薬や化学肥料に依存せず、自然環境に負担の少ない持続可能な農法で育てられた、という点だ。僕はその有機農業の考え方を支持しているから、有機農家をできるだけ応援したいと思って無農薬野菜を売っている。安心安全だからという理由で売っているわけではない。

普通栽培の野菜だって、一生懸命、生産者の人がまじめに作った野菜であり、農薬も厳しい安全基準が設定されているし、30年前に比べたら農薬の安全性は格段によくなった。どうしてもお好み焼きでキャベツが必要なら、普通栽培のキャベツで十分だ。自然環境への負荷という点では無農薬の方が いいが、人が食べる分には十分、安心安全だ。

どういう理由であれ、無農薬野菜を選んでもらうことで有機農家の支援にはなる。だが、有機栽培の本当の価値ということにも目を向けてほしい。そして普通栽培の野菜を下卑しないでほしい。

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